祈り

祭と斎

正教会には、独自の「暦」があります。正教徒にとって、「暦」は単なる通過儀礼ではありません。私たちは、「暦」によって「時の成聖」というものを行います。「時の成聖」とは、私たちが生きているこの「時間」を「聖なるもの」にしていくということです。「時」というものも、罪によって堕落しています。だから「時」もあがなわれなければなりません。神から分離し、無意味に空虚に向かって過ぎゆく「時」を、神と結びつけ、意味あるものとして充実に向かって進むものにしていくということです。正教会の暦はそのためにあります。もし、私たちが教会の暦にそって信仰をもって生きるなら、私たちの時間は、ハリストス(キリスト)と堅く結び合わされます。

正教会には「復活祭」を中心とした一年の暦があります。主日ごとに基点をもつサイクルとも言えます。「復活祭」の前には「大斎」と呼ばれる準備の期間があり、またその「大斎」の前に「大斎準備週」という期間もあります。これらの期間の主日には特別なタイトルがつけられ、聖書や奉神礼の言葉をとおして、信仰の学びを行うようになっています。復活祭後から聖神降臨祭という祭の期間を「五旬節」といい、同じように各主日に特別なテーマがつけられています。聖神降臨祭の次の主日から「第1主日」「第2主日」と数えて行きます(正確には「五旬祭後第○○主日」と言う)。復活祭の日付は毎年かわりますので、主日の数もその年によって多かったり少なかったりします。

復活祭は、「春分の日の後の満月の後の最初の主日」と決められています。正教会と西方のキリスト教と復活祭の日付が違うことがありますが、これは春分の日を旧暦新暦どちらで見るかに原因があります。

旧暦というのは、ユリウス暦とも言い、紀元前46年にローマ皇帝ユリウスによって制定された太陽暦です。「一年を365日とし、四年に一回うるう年を設ける」という暦ですから、現在の暦の数え方とあまり変わらないように思えますが、実際の太陽の動き(正確には地球の動き)とは微妙にずれてしまいます。計算すると128年に一日ユリウス暦が多く日を数えることになります。16世紀にそのずれを解消するためにローマ法王グリゴリオスによって制定されたのが新暦で、グリゴリオ暦とも呼ばれます。今では、新暦と旧暦との差は13日もあります。私たちの日常のカレンダーは新暦で表示されており、その上に旧暦を重ねて見ますのでその13日のずれが問題になります。例えば、旧暦の12月25日は、新暦のカレンダー上では1月7日となってしまいます。

世界の正教会には、新暦にのっとる教会と旧暦にのっとる教会とがありますが、復活祭の日付だけは旧暦に従って計算されたものに統一されています。日本正教会は、基本的に旧暦を用いる教会です(日本に定着したクリスマスのみ、宣教的な目的のため、1月7日ではなく12月25日の新暦にずらしています)。

復活祭は、「祭の中の祭、祝いの中の祝い」と呼ばれるほど卓越した祭ですが、正教会にはその他にも祭がたくさんあります。毎日、その日に記憶される聖人がいますので、その聖人を祝うことによっていつでも祭とすることができます。また、聖人だけではなく、聖書の中の出来事や、教会の歴史的な出来事などを記憶する祭もあります。その中でも「十二大祭」と呼ばれる大きな祭があり、正教会では大切な祭として聖体礼儀を行い、祝い、その祭をとおして自分の生活の中に神の恵みを注ぎ入れます。

「十二大祭」とは次のような祭です。

  • 生神女誕生祭 <旧暦9月21日/新暦9月8日>
    生神女マリヤの誕生を「救いの始め」として祝う。
  • 十字架挙栄祭 <旧暦9月27日/新暦9月14日>
    ハリストス(キリスト)がかかった木の十字架の発見を記念する。
  • 生神女進堂祭 <旧暦12月4日/新暦11月21日>
    後に神の宮となるマリヤが12歳の時に神殿に献じられた祝い。
  • 主の降誕祭 <旧暦1月7日/新暦12月25日>
    イイスス(イエス)・ハリストス(キリスト)の誕生、神の藉身を祝う。
  • 主の洗礼祭(神現祭) <旧暦1月19日/新暦1月6日>
    ハリストス(キリスト)の洗礼と至聖三者の神の顕れを祝う。
  • 主の迎接祭 <旧暦2月15日/新暦2月2日>
    生後40日目のイイスス(イエス)が神殿に連れていかれたことの記念。
  • 生神女福音祭 <旧暦4月7日/新暦3月25日>
    一般に「受胎告知」と言われるもの。マリヤの従順さを尊む。
  • 聖枝祭 <復活祭の日付と共に毎年移動する>
    ハリストス(キリスト)がロバに乗ってエルサレムに来たことを祝う。
  • 主の昇天祭 <復活祭の日付と共に毎年移動する>
    ハリストス(キリスト)が復活後40日目に昇天されたことを祝う。
  • 五旬祭(聖神降臨祭) <復活祭の日付と共に毎年移動する>
    五旬祭の日に聖神が使徒たちに降り、教会が誕生したお祝い。
  • 主の変容祭(顕栄祭) <旧暦8月19日/新暦8月6日>
    ハリストス(キリスト)が山の上で光栄の姿を顕したことを祝う。
  • 生神女就寝祭 <旧暦8月28日/新暦8月15日>
    マリヤが永眠し、復活の先取りをしたことを祝う。

祭は、その他にもたくさんありますので、教会のカレンダーなどをご参照ください。なお、日付が毎年同じ祭(固定祭)に関しては、9月が年の始まりとなっています。

正教会には、祭だけでなく、一年間に「四つの斎の期間」があります。「斎」とは食事の節制や、より熱心な祈祷が勧められる時で、祭の準備です。

  • (1)降誕祭の前の斎 <別名「フィリップの斎」>
    11月27日から降誕祭前の期間。
  • (2)大斎 <別名「四旬斎」>
    復活祭を迎える前の斎。特別な祈祷やより厳しい斎が勧められる。正教会において非常に大切な期間。受難週も斎する。
  • (3)使徒の斎 <別名「労働の斎」>
    第一主日の翌日から聖使徒ペトル(ペテロ)・パウェル(パウロ)祭の前日まで。
  • (4)生神女就寝祭前の斎
    8月14日から生神女就寝祭の前日までの二週間。

「その他の斎の日」

前駆イオアン(ヨハネ)斬首祭/十字架挙栄祭/降誕祭の前日/神現祭の前日/毎週水曜と金曜(ただし斎が解かれる週は別)

「斎をしない週」

税吏とファリセイの主日につづく週/光明週間/降誕祭の期間など

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