祈り

時課と一週間

「時課」について

正教会には「時課」と呼ばれる奉神礼があります。「時課」とはもともと一日を八つの時間に分けて祈る習慣から生まれた祈りです。時間ごとに祈るという形は、使徒時代、初代教会までさかのぼることのできる伝統的な奉神礼です。

正教会では、ユダヤ教と同じように、夕方から一日を数えます。創世記第一章に、「夕となり朝となった」とあるからです。奉神礼的に言えば、「晩課」と呼ばれる時課から一日が始まります。例えば、土曜日の夜はすでに日曜日ととらえます。

時課の内容としては、主に聖詠(詩編)を読み、祈祷文を歌ったり読んだりする構成となっています。時課には、「時課経」という祈祷書を基本的に使用します。

時課の種類としては以下の八つがあり、それぞれにテーマをもっています。

  現在の時間 テーマ
晩課 夕方6時頃 天地創造と陥罪とハリストス(キリスト)の到来
晩堂課 夜の9時頃 痛悔
夜半課 深夜0時頃 最後の審判
早課 早朝3時頃 起床への感謝、神への讃美
一時課 朝の6時頃 ハリストス(キリスト)の裁判
三時課 朝の9時頃 十字架刑、聖神降臨
六時課 正午12時頃 十字架上のハリストス(キリスト)
九時課 昼の3時頃 ハリストス(キリスト)の死

しかし、現代では正確に時間ごとにそれぞれを祈るのではなく、一度にまとめて行われるのが普通です。また修道院は別として、これらを毎日きっちり行うことはほとんどありません。普通、町の教会では、主日(日曜日)や祭日の前の晩に、「徹夜祷」と称して「晩課」「早課」「一時課」をまとめて行い、その日の朝に、「三時課」(時には「六時課」も続ける)と「聖体礼儀」を行います。なお、聖体礼儀は「時課」と共に執行されますが、時課の祈りの範疇には入りません。聖体礼儀がこの世の時間の外にある「永遠の時」を意味するからです。

一週間について

旧約聖書の創世記には、神様が七日間で天地を創造されたことが記されています。これを文字通り24時間×7日=168時間ですべてが形成されたと解釈することはありません。聖書は科学的な、または歴史学的な書ではなく、人間の言葉で書かれた神の言葉です。七日というのは一週間の単位として古来より現代まで用いられています。ある意味、人間の生活習慣から生まれた単位ではありますが、それをとおして、神の偉大なる秩序正しい天地創造の神秘を啓示しているのです。それを啓示された民であるヘブライ人は、この一週七日を神聖視し、大切にしました。そしてその伝統を受け継いだキリスト教(正教会)の世界の中で、一週間の周期は一度もずれることなく連綿と続いています。

「7」という数字は、聖書において、聖なる数または完全を意味する数として扱われています。また、天地創造の日数であるため、「7」は「この世」を意味していると正教会は考えます。そこに「1」がプラスされる(ハリストス(キリスト)の到来)と「8」になります。「8」は、来世とか天国とか復活を意味するようになります。ハリストス(キリスト)が復活した日曜日は、数え方によっては「八日目」になります。「7」が「1」欠けると「6」になります。完全性の欠如は悪であるので、「6」は悪魔や罪を象徴するようになります。もちろん数字に対する意義付けであって、数字そのものにそのような神秘の力が潜んでいるのではありません。

正教会の奉神礼には、「八調」という独特のサイクルがあります。聖歌のメロディや祈祷文に、第一調から第八調までの種類があって、一週間ごとに順番に調を変えていきます。第八調までくると次の週は第一調にもどります。「8」のサイクルは、前述のように「天国」を意味するサイクルです。

正教会の中で、一週間の各曜日は、それぞれ特別なテーマをもっています。特に注目されるのが、土曜日と日曜日で、他の曜日とは違い、神聖な日、喜びの日、祭の日という性格があります。正教会では土曜日のことを「スボタ」と言います。これは「安息日」を意味するヘブライ語「シャバット」に由来しています。「十戒」には「安息日を覚えて、これを聖とせよ」とありました。正教会にとって聖なる「スボタ(安息日)」は今でも土曜日です。しかしユダヤ教のように「何も労働しない」ということではなく、神の善なる天地創造、しかし罪によって汚されたこの世、救世主への待望などを記憶するという精神的な意義付けがなされます。またハリストス(キリスト)が墓の中に安息した日という意味も「スボタ」はもっています。日曜日は、正教会では「主日」と言います。つまり「主の日」「主ハリストス(キリスト)の復活した日」という意味です。復活したハリストス(キリスト)は、死んで三日目すなわち日曜日に顕れました。正教会ではハリストス(キリスト)の復活を年に一度盛大に祝いますが、毎週日曜日、主日も、小さな復活祭なのです。「主日」は、第八日目であり、天国を先取りし、復活にあずかる喜び溢れる日です。

一方、正教会において水曜と金曜は、「斎(ものいみ)」の日です。「斎」とは一言で言えば「節制」です。生活の面から節制して、ハリストス(キリスト)の受難と十字架を記憶します。

以下は、各曜日の記憶事項の一覧です。

曜日 別称 記憶事項 備考  
日曜 主日 主の復活・天国 主の復活の日
月曜   天使 または痛悔    
火曜   前駆イオアン(ヨハネ) 痛悔    
水曜   主の受難、十字架 イウダ(ユダ)の裏切り
木曜   聖使徒 機密の晩餐  
金曜 準備日   十字架刑の日
土曜 スボタ 聖人、死者 主が墓にいた日
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