祈り

聖体礼儀

聖体礼儀は、正教会の中で最も中心的な奉神礼であり、最も重要な機密です。「機密」というのは「見える」この世の物と「見えない」神の恵みが一つになることです。ですから、神そのものであるハリストス(キリスト)が私たちと同じ肉体をとられたこと(藉身)が、機密の基礎となります。その藉身されたハリストス(キリスト)と私たち一人一人が繋がりをもち、交わり、一つに合わさるための最も重要な機密としてハリストス(キリスト)自らが聖体機密をお与えになりました。

ハリストス(キリスト)は、「私は天から降ってきた生きたパンである。…私の肉を食べ、私の血を飲む者は私におり、私もまたその人におる」と言われ(イオアン(ヨハネ)5:51以下)。そしてパンとぶとう酒をさして「これは私の体」「これは私の血」と言われたのです(マルコ14:22〜24、他)。ハリストス(キリスト)が十字架にかけられる前の晩に弟子たちととった食事を、一般ではよく「最後の晩餐」と言いますが、正教会では特別に「機密の晩餐」といいます。この「機密の晩餐」において、聖体機密が制定されたからです。

正教会では、パンとぶどう酒をハリストス(キリスト)の体と血に「見立てている」のではありません。単なる象徴とか儀式で聖体礼儀を行っているのではありません。しかしまた、すっかり体と血に変質してしまって、もはやパンとぶどう酒ではないとも言いません。聖体礼儀は魔法ではありません。パンとぶどう酒はパンとぶどう酒でありながら、同時にハリストス(キリスト)の体と血に変わります。どうやってパンとぶどう酒がハリストス(キリスト)の体と血に変化するのかは、理解を超えたことで説明できません。ただ聖神の力によってとしか言えません。しかし、現実に、聖体機密のパンとぶどう酒はハリストス(キリスト)の体と血です。

現在、正教会で行われている聖体礼儀にはいつくかの種類があります。

  • (1)聖大ワシリイの聖体礼儀
    聖大ワシリイが作成したといわれる聖体礼儀で、現在、正教会で、年10回だけ行われています。
  • (2)聖金口イオアン(ヨハネ)の聖体礼儀
    ほとんどの主日、祭日に執行されるもので 聖大ワシリイの聖体礼儀を少し短くしたものです。普通、「聖体礼儀」と言えば、金口イオアン(ヨハネ)の聖体礼儀を指します。
  • (3)聖グリゴリイの聖体礼儀
    復活祭前の準備の期間である大斎と呼ばれる時期に、晩課の祈りに続いて御聖体を領聖する厳かな奉神礼です。その御聖体は、先の日曜日に余分に作られて準備されるので、またの名を「先備聖体礼儀」といいます。

他にも、聖イアコフの聖体礼儀や聖マルコの聖体礼儀というのもありますが、前者はエルサレムの正教会で年に一回だけ行われ、後者はアレキサンドリアの正教会で年に一回だけ行われるという特別な聖体礼儀です。

聖体礼儀(金口イオアン(ヨハネ))は、三部構成になっています。

  • 1.奉献礼儀:「プロスコミディア」ともいい、御聖体となるパンとぶどう酒の準備、聖人や生者・死者の記憶などを行います。所謂「聖体礼儀」の祈りが始まる前に、至聖所の奥の奉献台にて一人の司祭がすでに奉献礼儀を済ませていますので、信徒の目にふれることはありません。
  • 2.啓蒙者のための聖体礼儀:聖体礼儀の前半部分で、主に「学び」を目的としています。「啓蒙者」とは洗礼を受けるために学びを受けている人たちのことです。聖詠やトロパリと呼ばれる聖歌、使徒経、福音経を通して、その日のテーマを理解できるようになっています。祈り、学び理解するという点において、ユダヤ教のシナゴーグ(会堂)礼拝に由来すると言われています。
  • 3.信者のための聖体礼儀:聖体礼儀の後半部分で、主に「体験」を重視するもので、最後に、領聖という聖体礼儀の目的を達成します。祈り、捧げものを供え、そして罪の贖いにあずかるという点において、ユダヤ教の神殿礼拝との関連が見られます。ただし、動物ではなく、パンとぶどう酒を献じますので、聖体礼儀を「無血祭」と呼ぶこともあります。なお、正教会では、必ず発酵させて作ったパンと赤いぶどう酒を使用します。

金口イオアン(ヨハネ)の聖体礼儀の式次第を簡潔にまとめてみます。

  • 司祭高声………………至聖三者の神を讃美
  • 大連祷…………………「主、憐れめよ」を繰り返し唱える
  • 第一アンティフォン…通常は102聖詠を歌う
  • 小連祷…………………大連祷の縮小形
  • 第二アンティフォン…ハリストス(キリスト)の藉身についての聖歌
  • 小連祷…………………大連祷の縮小形
  • 第三アンティフォン…真福九端(マトフェイ(マタイ)5章)を歌う
  • 小聖入…………………福音経によって主の公生涯の開始を象(かたど)る
  • トロパリ………………その日のテーマを歌う
  • 聖三の歌………………至聖三者への祈り
  • ポロキメン……………聖詠(詩編)の数節を歌い交わす
  • 使徒経…………………暦に従って指定された箇所を読む
  • アリルイヤ……………神を讃美する歌
  • 福音経…………………暦に従って指定された箇所を読む
  • 重連祷…………………「主憐れめよ」を三回繰り返す連祷
  • 啓蒙者の為の連祷……洗礼を受ける前の人(啓蒙者)の為の祈り
  • 信者の為の連祷………洗礼を受けた人(信者)の為の祈り
  • 大聖入…………………パンとぶどう酒を宝座に移す
  • 増連祷…………………「主、賜えよ」と繰り返して祈る
  • 信経……………………「信経」を歌う
  • 機密の執行……………パンとぶどう酒が聖神によって変化
  • 生神女への讃美………通常は「常に福い」という聖歌を歌う
  • 増連祷…………………「主、賜えよ」と繰り返して祈る
  • 天主経…………………「天にいます我等の父や、」と祈る
  • 領聖……………………御聖体をいただく
  • 感謝の祈り……………領聖したことを感謝する連祷や祝文
  • 発放詞…………………司祭による最後の祝福
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